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中国語の四声が平仄の基本

 脚韻(きゃくいん)と平仄(ひょうそく)が漢詩の基本的ルールとなっています。前章で脚韻のことを話しました。脚韻の分類などは追々話すことにします。 つぎに平仄ですが、すべての文字が「平」と「仄」のどちらかに分類されます。中国へ行くと中国語という言語はありません。日本で中国語といっているのは普通語(プートンファ・北京語)のことです。北京語の四声のうち一声、二声が「平」、三声、四声が「仄」と思えばいいでしょう。四声についてはテレビの「中国語講座」で抑揚の線を描いて説明していますから、ご覧になった方も多いことでしょう。中国には北京語のほかに上海語や広東語や福建語など多くの言語があります。広東語となると四声ではなく八声、福建省には九声もあるようです。さらに少数民族の言語もあります。テレビなどを通じて普通語が次第に広まりつつあるとはいえ、地方では中国人同士でも特定の人以外通じないのが普通です。このように北京語が全てではないのですが、作詩は北京語によることにします。

 古典詩の一例として宋の大詩人蘇軾の高名な『春夜』の詩を現代北京語のピンインと四声で書いてみることにしましょう。

  春宵一刻直千金  chun@ xiao@ yeA keC zhiA qian@ jin@
  花有清香月有陰    hua@ youB qing@ xiang@ yueC youB yin@
  歌管楼台声寂寂    ge@ guanB iouA taiA sheng@ jiC jiC
  鞦韆院落夜沈沈    qiu@ qian@ yuanC louC yeC chenA chenA

註:声調の表記は数値@ABCによる。

 この詩はこのように、現代語で発音しても美しい抑揚を伝えることができます。この形式を古典の平仄と韻で書くと次のようになり、起句の「価千金」以外はほぼ同じになります。「値」を「価」と置き換えればjiaC で、仄平平と成り定型どおりと成ります。

○○●●●○◎
○●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎ (○は平字、●は仄字、◎は平韻字)

 起句と結句の二字目、六字目に平字が入っていますがこれを平起こしといい、これが逆になると仄起こしといいます。四字目は必ず二字目と反対になっています。これが絶句(四行詩)の平仄基本ルールで、「二四不同二六同」といわれています。

 つまり古典詩は陰陽が陰に行ったり陽に行ったり交互に捻られて行く。これを捻体というのですが、その抑揚が美しい詩情を盛り上げて行くように作られているのです。このように中国の古典詩は音と不可分の性質を具えているのですが、それは中国音で読まなければ、効果は滅失してしまいます。吟唱の場合、平字は長く、仄字は短く歌います。日本語にしてしまって朗詠する詩吟は、音楽性を全く無視したやり方だという外ありません。