漢詩詞創作講座初心者07 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社 TopPage

詩のパーツは2字と3字から成る。

 さて前章の蘇軾の『春夜』の分析をもう少し続けてみましょう。この詩の内容はほぼお解りかと思います。鞦韆というのはブランコのことですが、古代中国では春の清明の季節に宮廷の女がブランコに乗るしきたりがありました。院
落とは庭のことです。春爛漫の夜も更けて、楼台の上の歌も細々となった。庭には昼華やかに官女が乗ったブランコが静かに下がっているのです。まさに一刻千金の時が流れてます。

 このような形式は七言絶句と呼ばれるもので、最も多く作られる形式の一つです。そしてその内容を見ると、詩を構成しているパーツは、2字の部分と3字の部分に分けることができます。すなわち

  2+2+3、2+2+3。
  2+2+3、2+2+3。

の形を成しています。絶句というのは四行詩と思われていますが、前半の七言二句と後半の七言二句が結合したものです。日本の詩壇では句読点を打たないところもあるようですが、現代中国ではすべて句読点を打っています。起句と転句は「,」承句と結句は「。」で押さえてあります。二句づつが結ばれていることがはっきり分かります。絶句によって説明して来ましたが、中国の詩詞の形式は実は何百とあります。長いものになると特にこの句読点が大事になって来ます。

 起承転結という言葉のは日本語の会話でもよく使われるのでご存じのことでしょう。たまたま絶句は4句から成るので、それぞれを起句、承句、転句、結句といっています。中国では結句といわず合句といいます。それは起句で始まり、承句で継承され、転句で転換された詩興が、第四句でそれまでの流れと合流するからで、合句といういい方の方が詩の構成に相応しいと思います。結句といういい方は何か結論を述べなければならないみたいで、詩の心とは一寸不釣り合いな気がします。わが国の漢詩には結句で主張を詠む人が多いけれど、これは下手なやり方で感心できません。その原因は結句という名称の影響もあるかも知れません。

 さて、パーツは2字と3字ということが解りました。蘇軾の『春夜』でいえば「春宵」「一刻」「清香」「楼台」「鞦韆」「院落」などがあります。こういう言葉を詩語といいますが、このパーツを一覧できるように分類記載したのが「詩語表」です。「詩語表」は、この蘇軾の詩のような名作を集めてばらばらにして、2字句と3字句にしてストックしたものと思えばいいでしょう。手早く漢詩を作り上げるのに大変便利なものです。ぜひ座右に揃えてください。最も使いやすいものとして太刀掛呂山著「詩語完備だれにもできる漢詩の作り方」(呉市長ノ木町8-36呂山詩書刊行会・2,000円)があります。それにあと漢和辞典があれば漢詩が作れます。漢和辞典は、それぞれの字の下に麻雀牌のような形をした韻字の表示のあるものを買ってください。最近学研などが、中学生用などとして出しているものには、この表示がないので注意してください。最もお薦めできるものとして、諸橋徹次先生が作られた『大修館新漢和辞典』(大修館書店)があります。諸橋徹次先生は大漢和辞典という厖大な大辞典を編纂されました。各々の字の引例が多く、中国人が参考にしている立派なものです。『大修館新漢和辞典』はそれを元として、手元用の簡易版を編纂したもので
す。多少馴れてきたら更に参考書もいろいろありますが、当面この2冊で充分でしょう。